「ケッカン」だらけのわたしたち〜血圧ってなあに④〜
医療は日々進化していると言われているが、それは、人間の身体にはまだまだわからないことが多いということの裏返しでもある。
そう、わたしたちは「わからない」ものを相手にして生きており、さらに言えば自分自身の事すら「わからない」でいる。
それでいて「わかってもらいたい」と望んでしまうという矛盾を抱えている複雑な生き物なのである。
「わからない」ものといえば、その最たるものとして「健康」という言葉がある。
「〈健康〉とは何なのでしょうか?」と問われた時、答えられる人はどれくらいいるのだろうか。
「健康とは、肉体的、精神的、そして社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病や虚弱さがないというだけではない」
とWHO(世界保健機関)では定義されているが、これを読んだところでよく「わからない」。
多くの情報が錯綜する世の中において、「これは正しいのだろうか」という疑問を持たせてもらえぬ程に、時間の流れは速さを増している。
まるで濁流のように時間が過ぎていく。
そのような中で、お灸から立ち上がる煙をぼんやりと眺めている時間は、至福の時間とも言える。
先日、知人がドクターヘリで運ばれたと伺った。現在は、無事に退院し、現在は日常生活を送っていらっしゃるようだ。
月に一度お会いする方で、夏の終わりにお顔を拝見した際に、いつもより顔が浮腫んでいらっしゃったので「お顔が浮腫んでいらっしゃいますね」とお伝えしていた。
その時は「そうかな?」とお答えになられた。
翌月にお会いした時は、顔色が白くなっていたので奥様にもお伝えした。
「そうかしら?」とお答えになられた。
その1週間後、心筋梗塞により2週間の入院となった。
心筋梗塞とは、冠動脈という心臓自体に血液を送る血管がつまって、酸欠と栄養不足から、心筋の一部が壊死(えし) するほど悪化している状態をいう。
《画像:国立研究開発法人国立循環器病研究センターHP(http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph92.html)より拝借》
動脈内にできたプラーク(コレステロールが蓄積してできた動脈硬化病巣)が破れ、その破れたところからホースがつまってしまう。
特に気温の差が激しい時に、起こりやすいと言われている。
倒れた日は、庭掃除をしていたのだが、なんだかいつものように動くことができず、動作が遅くなる。
休み休み作業を続けようとしたが、どうも体を思うように動かせない。
これはおかしいと思い、奥様に電話をかけた。
奥様は慌てて帰宅した。
ご主人は気持ち悪いと言って2度吐いた。脳に何か起こったのかもしれないと思ったそうだ。
少しずつ身体が冷たくなっていった。
朝、まだ早い時間だったので、ご近所に迷惑がかかるかもと迷ったが、救急車を呼んだ。
病院へ到着すると、その日は、大きな病院から医師が来てくれている日で、その医師の判断により、すぐヘリの手配がなされた。
前日までは、台風の影響もあり、とてもヘリの飛べるような天候ではなかったという。
ヘリに同乗された奥様は、その時の様子を「稀に見る日本晴れの日で、本当に棚田が美しかった。」と仰った。
多くの方が心配をしてくださるのに、このようなことを言うのはいけない事かもしれないけれどもと前置きをされ、
お医者様のところに運ばれていくからもう大丈夫だと安心したら、目の前に広がる風景がとても美しくみえたとお話しされた。
自然崇拝にはじまったとされる、日本人独特の素朴でおおらかな信仰の姿とは、このようなものなのかもしれない。
そんな事を思った。
今週から、また急に寒くなってきた。
そのうえ年末年始は飲みごとも増え、食生活の乱れとともに睡眠時間もずれてしまう。
気をつけなければと、一応、自戒だけはしてみる。