その2 慰安は嫌だ
ずっと実家に帰る事を避けていたが、無一文になり、5年ぶりくらいに九州にもどった。
まともに家族と顔を合わせた際に、母の老眼鏡をかけている姿を見て、ショックを受けた事を覚えている。
人は年をとるのだ。
もしも母が倒れたときに、田舎に帰ってきて面倒をみるならば、信用がいるだろう。
国家資格を得なければいけないと思ったのはそれが一つ。
国家資格といっても、柔道整復師もあれば理学療法士もある、なぜ鍼灸にしたのか?
理学療法士だと勤務なのでパス。
柔道整復師は、安い金額で患者さんが通えるので、集客しやすいだろう。
しかし、初期の設備投資がとてもかかる。
そうなると鍼灸か?
鍼灸の免許を取りに行く事だけを決め、勤務をしながら、理想の形態を探した。
当初は出来る事を提示して、クライアントに選んでもらう形態にしようと思っていた。
実際、色んな事をなさっている治療院は多いのではないだろうか?
そして、クライアントの満足度ももしかしたら、そういう形態の方が良いのかもしれない。
しかし、それではダメだと思った。
慰安の為の仕事をしていく事が嫌だ。という事に気がついた。
なぜか?
気持ちが良いだけでは、また繰り返してしまう。原因が解決していない。
しかし、それを私がやる必要があるだろうか?
気持ちよい事だけをして、感謝されて、お金をいただければ良いではないか。