東洋医学の「ものの見方、考え方」陰陽五行説
竹山晋一郎著の『漢方医術復興の理論』(績文堂刊)に目を通していたら、
「陰陽五行説」についてちょうど良い箇所があったので引用する。
東洋医学は、言葉の難しさ、時代背景の複雑さなどから、非常に理解が難しく感じる。
難しさゆえに曖昧にされてしまう事が多いように感じる。
しかし、決して神秘的というわけでも不思議なものでもない。
【以下引用】
陰陽五行説は、ある時代の中国の「物の見方、考え方」となった世界観で、この思想によって政治も文化も天文も諸々の年中行事も推し進められ、事物の解釈、説明、究明も行われたのです。
この思想は、ある時期に朝鮮・日本にも渡来して、その影響を残しています。中国・朝鮮には今でも、その影響が生きていますが、日本では、今では、「経絡治療」を唱導する鍼灸家と一部の漢方医の間にだけ通用して、昔のままに残されているだけかも知れません。丸山昌朗さんは、
「陰陽五行説は、元来別箇の論説であったとも考えられる、陰陽論、五行説が、合併されて成立した学説である」
と言っています。そして、
「陰陽論とは、事物の本質を変化運動に帰して、形相と質料の相違を量と場に索めたものである。換言すれば、形式論理学が空間系で思惟するに対して時間系にて思惟する方法である。
五行説は、事物を東、西、南、北、中央の五つの各点に分類して、その相互関係を示したカテゴリー論であると言えよう。
この両者を併合した陰陽五行説は、中国古代人が、その経験から帰納した知識体系で、全く神秘的傾向を含まないのが、その特徴である」(「漢方の臨床」第八巻第三号)
と主張しています。
とにかく、一時、中国を支配したこの思想が、あらゆる分野から、その姿を消して行ったにもかかわらず、医学の分野にのみ、いまなお存在しているという事実は、この思想が荒唐無稽でもなければ、不合理な、あるいは神秘的なものでもなく、合理性のある現実的な、実際に役に立つものを持っていることを証明しています。
医学は、不合理性や神秘的なものを排除するからです。
鍼灸医術『経絡治療』は、経絡・経穴を基本とした「随証療法」であることは前述の通りであります。「隋証療法」という治療体系の、経絡・経穴、病因・病症、診断・治療に至るまでの、体系を一貫して支えるバックボーンとなっているのが、陰陽五行説です。